第6回 街づくりは資産維持のため

 前回までは、主に行政の方々に向けての内容となりましたが、今回は住民の方々にとって街づくりはどんな意味があるのかについて説明します。
 バブル経済が弾けて世の中全体に先行き不安が漂う、平成10年9月、私は、欧米の住宅事情を研究されているNPOの「住宅生産性研究会」のセミナーで、目から鱗の話を聞きました。まず、アメリカでは地価の変動がないので(サブプライムローン問題よりずっと前のことです)、住宅の資産価値は買った瞬間から下がり続けるという話に衝撃を受けました。例えば、土地が1500万円、建物が2000万円、合計3500万円の住宅を買ったとすると、建物の資産価値は30年でゼロになるため、この住宅の資産価値は30年後には1500万円まで下がるというわけです。私は、昔から不動産取引にも関心があり建物価格が30年でゼロになることは知っていたのですが、何でこんな簡単なことに気が付かなかったのか、まさに目から鱗が落ちる思いでした。
 そこで、アメリカでは、資産価値の下落を食い止めるため誰もがマメに住宅の手入れをするということでした。手入れが悪いと30年も経たずにゼロになるからです。また、いつでも買い手が付くように、建物の間取りやデザインは癖のない伝統的な様式とすることも下落防止に役立つようです。いま人気の町家や古民家は、この法則にかなっているとも言えます。そして、地価の下落に対しては、街づくりで対抗するのだそうです。その一番簡単な方法が、大きく育つ街路樹を植えることだそうです。映画やテレビで見るアメリカの住宅街は大木が林立する森の中にあるようですが、開発当時の写真では、若木の街路樹しかない日本の民間団地とまったく変わりません。それが30年経つと森になるわけです。その講師は「時間が経つにつれ価値が上がるのは木だけです!」と言われました。これは一つの手法ですが、要は、誰もが住みたくなるような美しい街にすると地価は下落しないし、上手く行けば上がることも期待できるということでした。
 これに対して、日本では、地価は必ず上がるという土地神話がありました。しかも、バブル期には、3500万円の住宅が5000万円、8000万円にもなるという状況でしたから、好き勝手な間取りや独りよがりのデザインの住宅を建てても、また、手入れをしなくても資産は増えたのです。当然、街づくりなど、誰も考えるはずがありません。
 そんな土地神話が崩壊してから21年。さすがに、もう地価は上がらないだろうということは常識になりつつあります。(正確には、全国一律に上がることはないということで、人気のある地域は上がることも考えられます。もちろんハイパーインフレは別として)しかし、世間全体が街づくりに対する考え方を根本的に変えるまでには、まだ30〜40年はかかると思います。ただ、その時は、もう、地価が下がる地域と下がらない地域の勝負が着いているはずです。(これについては次回に説明します)そんなことにならないために、住民の皆さんには、街づくりは、将来の自分たちや子どもたちの資産を守るためにやるのだという意識を持ってもらいたいと思います。