第5回 住民主体の進め方

 ここまで、街づくりを住民主体で進めることの意義について説明してきましたが、今回は、これを、どのようにして進めるか、について説明します。
 まず、検討の「場」づくりですが、私は、地域の誰もが参加できる「全体会」(会の名称ではなく、位置づけを表します)を検討主体に、これを「世話人会」が運営する仕組みをお勧めしています。
 全体会の設置をお勧めするのは、事業を実施する際には必ず地元説明会が開かれますが、これが紛糾して事業が立ち往生するというのが常ですから、それなら最初から、これに参加されるような人たち、すなわち全住民に計画を考えてもらおうという発想です。会の座長や進行、開催日時や議題も住民に任せます。
 ただ、百人ぐらいの参加を想定するとなると、何から何まで全体会で議論するわけにもいかないので、まず、第1回目の全体会で、これを運営する組織としての世話人会を設置してもらいます。世話人会という名称にするのは、地域の代表ではなく、お世話をしたい人がやっているということを明らかにするためです。従って、希望者を募ります。そんなことをしたら我も我もと名乗り出て収拾がつかなくなるのではないかと言われますが、そうなればなったで、後は住民に任せたら良いのです。実際、世話人が30人以上集まった事例がありましたが、結構、うまく運営されていました。
 開催頻度ですが、基本的に全体会は月一回を想定します。これに対して世話人会は、全体会の後日に、前回を振り返り次回の議題を決めるための会、次回の議題について検討を行う会が1回以上、それぞれ必要となります。つまり、毎月3回以上の会合が開かれることになり、世話人はもちろん行政もコンサルタントも大変な負担となりますが、一方で、行政とコンサルタントにとっては、報告書形式の資料を作る必要がなくなりますから、その分の負担が減ってトータルとしてはイーブンというわけです。
 では、本当に全てを住民に任せられるのか、はたして住民が的確な指示を出せるのか、これは、いつも行政から、時には住民からも言われる言葉です。もちろん、住民に丸投げして指示を待つわけではありませんが、と言って、行政やコンサルタントがシナリオを描くわけではありません。要は、住民からの疑問や質問に対して、行政やコンサルタントが正しく答えれば自然と道は開けるという考えです。
 ただし、第3回でも述べたように、単に住民と行政が同じテーブルに着くだけでは、議論はほとんどすれ違いに終わります。従って、検討の場づくりだけでは上手く行きません。一般に、二者が議論をすれば対立が生れ、そこに第三者が入ると調和が生れるといわれますが、住民主体の街づくりでも、第三者としてのコーディネーターが必要です。
 このコーディネーターの役割ですが、行政と住民の議論がかみ合わない場合、例えば、「まちづくり」という言葉を使っていても都市整備の場合は都市施設づくりを意味しているとか、「行政は基準、基準と融通が利かない」という住民の不満に対して、「基準がなければ地域ごとに車線の幅が違うとか担当者によって補償額が違うという不都合が出るでしょう」と説明をして、住民の誤解や不信を解くことが重要です。そんな説明なら行政でもできると思われるかも知れませんが、同じことを行政が言っても聞いてもらえません。そこに第三者の意義があるのです。
 コーディネーターを誰が務めるのかについては、街づくりの専門知識が必要ですから、いわゆる学識経験者でも良いのですが、住民が参加する会合の全てに同席する必要がありますし、また、会合の資料づくりを細かく指導する必要もあるため、現状では、コンサルタントの管理技術者が務めるのが現実的ではないかと考えます。
 住民主体の進め方として、まずは検討の場づくりから説明しましたが、これは、あくまでも一例であって、実際には状況によって様々な形態が考えられると思います。
 しかし、どのような形態であれ、住民主体の街づくりではコーディネーターを明確に位置付けることが最も重要だと言えるでしょう。