第4回 住民主体は時間を短縮できる

 前回、住民主体の進め方は時間が大幅に短縮できると言いましたが、今回は、これについて、別の角度から説明します。
 一般に、都市整備の計画は、@現況分析、A課題抽出、B整備方針、C整備計画、といったステップを積み重ねて作成されます。これを受託したコンサルタントは、各ステップの検討資料ができれば、その都度、担当者(普通は係員と係長クラスの人)と打ち合わせを行って、その方向で良いか、チェックを受けます。だいたい@ABまでのステップは、あまり大きな変更もなく進みますが、Cになると具体的な計画ですから、いろんな選択肢や代案を比較検討するため、修正あるいは追加の検討が次々と出てきます。そして一定の案に落ち着くと、初めて課長のチェックを受けます。その結果、場合によっては、再度、修正や追加の検討が出てきます。やがて、それも一定の案に落ち着くと、さらに部長や局長、場合によっては、もっと上のチェックを受けてから報告書にまとめます。
 ただし、これは担当課としての案です。部長や局長が見ているから、部や局としての計画だろうと思われるかもしれませんが、あくまでも担当課としての案がチェックされただけです。計画に関係のある他の課のチェック、例えば、都市計画手続きの担当課や施設管理の担当課、あるいは府県や国、鉄道会社や高速道路会社といった関係する外部機関のチェックは、この報告書がまとまってから、次の年度に関係機関協議として行われます。もちろん、担当課の段階で関係課や外部機関と事前協議を行うこともありますが、正式協議は改まってというのが一般的です。
 こうして、行政側の案が固まった後に初めて地元住民に計画が示されるので、順調に進んだ場合でも、そこまでに2年はかかります。住民には、やはりステップ@からCまでの説明が行われます。しかし、行政の専門家でも先のような試行錯誤を繰り返した後に到達した案ですから、それを素人である住民に、一回や二回の説明で理解しろと言う方が無理です。このため、住民は、行政による押し付けだと捉え、それならと、思い思いに代案を出し、あげくに収拾がつかなくなるのです。もし、収拾がついたとしても、計画のスタートから住民合意まで、結局、3年はかかることになります。
 ところが、住民主体で白紙から検討すれば、最短の場合、計画スタートから住民合意まで1年ということもあり得ます。なぜなら、住民には、案を固めてから関係機関のチェックを受けるという考え方は通用しませんので、必要なチェックは、その都度、確認しながら進めて行くからです。
それでも、行政だけで進める場合と同じチェックを受けるのだから、同じように2年や3年はかかるのでは、と思われるかもしれません。
 しかし、資料を作るコンサルタントにすれば、行政への対応と住民への対応は全く異なります。行政からは、基本的に「読んでわかる」資料が要求されますから、担当者のチェックを受ける段階から、完璧な報告書形式で作らねばなりません。その報告書のたたき台を、課長や部長などのチェック、さらには外部機関のチェックを受ける度に作り直していきますから、時間がかかります。
 これに対して、住民からは「見てわかる」資料が求められます。くどくどと文章が書かれた資料など読んでもらえません。つまり、住民対応の資料は、要点をまとめたら良いので、そんなに時間はかかりません。おまけに、行政だけで検討する場合はチェックに時間がかかりますが、住民主体の場合は、チェックの回答が遅れれば誰が止めているかが分かりますので、チェックする側もスピーディに対処してもらえるというわけです。
 私が、住民主体の街づくりをお勧めする理由は、このように、全てにおいて物事がスピーディに運ぶことにあります。決して、この手法なら必ず地元がまとまると言っているわけではありません。むしろ、この手法は、まとまらなかった場合でも意義があることを強調したいのです。
  前述のように、従来の進め方では、住民説明会までに行政内部で計画の立案・検討から関係機関との調整まで行われていますので、住民説明会で行き詰ると、それまでに行政が費やした時間と労力が無駄になってしまいます。しかし、この手法では、計画立案の最初から住民が参加しますので、もし、ある地域で地元がまとまらなかったら、すぐに、また別の、街づくりが必要な地域で新たな取り組みをスタートさせることができるのです。
 もちろん、街づくりは、その地域のためだけに行われるものではありません。むしろ、全地域にとって重要な箇所として実行されようとしているので、地元がまとまらなかったからと言って簡単に諦めるべきではないという反論があると思います。しかし、私は、それでもなお、次の新たな可能性を求めて撤退すべきだと考えています。これについては、改めて説明しようと(第7回)思います。