第1回 「まちづくり」と「街づくり」

 現在、「まちづくり」と平仮名で書けば、道路や公園や宅地をつくるだけでなく、コミュニティづくりや商店街づくり、あるいは介護や防犯・防災への取り組みなど、あらゆる分野を包括した、トータルとしての地域社会づくりを意味するのが常識となっています。
 この「まちづくり」という言葉が行政の計画書で使われた最初の事例は、昭和44年に京都市が発表した『まちづくり構想』ではないかと思います。私が京都市の都市計画課に就職して3年目のことですが、京都市では、その2年前に革新市長が生れていました。革新市政では、都市整備の新しいマスタープランを作る必要があり、それまでの常識であった計画図一辺倒の『長期開発計画』に対抗して、社会福祉や教育など市政全般のあり方から説き始め、最後に、土地利用や道路網や鉄道網といった都市整備のあり方を示すという画期的なプランを作りました。この時、「新しいマスタープランには新しいタイトルを」として考え出されたのが『まちづくり構想』です。当時、まだ、どこも使っていなかったと聞きました。それ以降、全国で次々と革新市長が生れたこともあって、「まちづくり」という言葉は瞬く間に広がり、今日のように誰でもが使う言葉になりました。
 たsだ、最初の『まちづくり構想』が都市整備プランとして作られたように、行政の建設部門を中心に、今でも、都市整備プランに「まちづくり」の言葉をあてる事例が少なくありません。しかし、一般の人はもちろん、行政でも都市整備部門以外の人は、すでに「まちづくり」と書けばトータルとしての地域社会づくりをイメージすることが常識となっています。このため、都市整備をテーマとする住民参加型の会合に「まちづくり」の言葉を使った場合、その検討内容について行政と住民の理解が食い違うことが珍しくありません。
 例えば、私が関与するのは都市整備部門が担当する仕事ですから、道路や駅前広場などの整備がテーマになっているのですが、タイトルに「まちづくり」とあれば、住民は、その時に地域で一番困っている問題、例えばワンルームマンションや独居老人の問題を議論したいと思うわけです。
  私は、そんな時、都市整備の場合は「街づくり」と漢字で書けばよかったのにと話します。なぜなら、漢和辞典(『漢和大字典』藤堂明保編 学習研究社)によれば、「街」という字は「きちんと区切りをつけたまちなみのこと」とあり、「街づくり」は「まちなみづくり」、すなわち、形としての街をつくることと解釈できるからです。
 いつも、私が関与する段階では、すでにタイトルが決まっていて手遅れなのですが、これから都市整備の仕事にタイトルを付ける場合は、ぜひとも「街づくり」という表現を使われることをお勧めします。